トラウマ(PTSD、C-PTSD、発達トラウマ)への多様なニューロフィードバックプロトコル

EEGcap
ニューロフィードバック
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当記事では、病院で使用されている「トラウマ(心的外傷)」の意味(基準)ではなく、一般的になっている「心の傷」という意味で「トラウマ」という言葉を使用しています。ご注意ください。

トラウマ、心的外傷後ストレス障がい(PTSD)、複雑性トラウマ(C-PTSD)、発達トラウマなど、一言で「トラウマ」といっても、表出する心理的・身体的症状には個人差があります。

  • 過覚醒(パニック・恐怖
  • 解離(ゾーンアウト・意識の麻痺)
  • 身体症状(自律神経系の調節異常などを含む)
  • 身体感覚の喪失・麻痺
  • 慢性的な恐怖感
  • その他

心理学および神経科学の研究によると、トラウマは単なる「心の傷」にとどまらず、恐怖を処理する大脳辺縁系(扁桃体など)の過剰な活性化や、自律神経系の崩れを引き起こすことが示唆されています。

つまり、トラウマ体験によって脳のネットワークが「常に危険にさらされている」と誤認し続ける状態になっていると考えられています。

同様にトラウマ体験があるといっても、一様ではなく脳波の状況にも個人差があります。

したがって、ニューロフィードバックを実施する際、ひとつの方法がすべてのトラウマに効果があるわけではなく、クライアント様の状態に合わせた最適なプロトコル(トレーニングの手順や方法)を選択する必要があります。

プロトコル(protocol)とは、手続き、規範、規約、儀礼などを意味します。ニューロフィードバックにおけるプロトコルとは、頭皮上のどの位置で、どの周波数帯域の脳波に報酬または抑制を与えるかを取り決めた手順や方法を指します。

トラウマ(PTSD、C-PTSD、発達トラウマ)向け主要プロトコルと解説

Bessel van der Kolk(ベッセル・ヴァン・デア・コーク)T4-P4 プロトコル

「身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法」 https://link.amazon/B04rqQXMh を執筆されたBessel van der Kolk氏らが開発した右脳側のT4-P4バイポーラモンタージュ、開眼状態で実施するプロトコルです。

モンタージュとは、脳波の電位差をどのように測定するかを示す配置のことです。頭皮と耳たぶとの電位差を取得する方法をモノポーラモンタージュ、頭皮と頭皮間の電位差を取得する方法をバイポーラモンタージュと呼びます。

T4やP4というのは、国際10-20システムにおける電極位置です。https://en.wikipedia.org/wiki/10%E2%80%9320_system_(EEG)

トレーニングは、シンプルなグラフィックと音によるフィードバックで行い、12分から開始して最大30分まで徐々に時間を延長していきます。

トラウマの記憶(フラッシュバック)を想起させずに、過緊張や感情の揺れを抑制することが目的とし、フラッシュバックの引き金になりやすい暴露療法などの心理療法に耐えられないほど、不安や解離が強いクライアント様に特に役立つことが多いです。

当施設では、T4-P4における22Hz付近以上の周波数帯域の過剰な振幅を抑制することで、良い結果が得られています。

なお、前述したBessel van der Kolk氏著「身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法」534ページ 図19-3に「PTSD固有の特徴というものはないが…」と記載されているように、トラウマがあるからT4-P4における22Hz付近以上の周波数帯域が常に過剰とは限りません。

Bessel van der Kolk氏らの研究では、少なくとも6か月のトラウマに焦点を当てた心理療法に反応しなかったPTSD患者に対し、24セッションのニューロフィードバックを実施した結果、対象者の72.7%がPTSDの基準を満たさなくなったというデータが示されています。

また、情動調節、アイデンティティの障害、見捨てられることへの懸念においても統計的に有意な改善が報告されています。

大脳辺縁系や楔前部(せつぜんぶ)を主なターゲットにするsLORETA Zスコア・トレーニング

大脳皮質の奥深くにある大脳辺縁系(Limbic System)や、頭頂葉にある楔前部(せつぜんぶ Precuneus)といった皮質下の関心領域(ROI)をターゲットにしたZスコアトレーニングです。

大脳辺縁系(Limbic System)は、過剰な恐怖反応や感情の異常なふらつきを落ち着かせる目的に向いています。

また、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の重要ハブである楔前部(ブロードマン7野など)へのアプローチは、自己参照プロセスや「過去の悲惨な体験」に囚われ続けている過活性状態を鎮めるために用いられます。

当施設では、どの領域をターゲットにするのが好ましいかをQEEGで確認していますが、実際に大脳辺縁系や楔前部の活動が過剰になっていることが多く、ニューロフィードバックトレーニングで鎮まっていくと、今までのパターンとは異なる認知状態になるなど、クライアント様にとって良い変化が得られています。

Zスコア(標準化得点)とは、ある脳波のデータ値が同年代の健康な平均値からどれだけ離れているかを表す統計的な指標です。Zスコアトレーニングでは、データ値が健康な平均値に近づいた際に報酬を与えます。

sLORETAとは、頭の表面で測った脳波のデータから「脳の奥深くのどこが活動しているか」を三次元モデルになるように計算し、特定の脳領域をピンポイントで鍛えるトレーニングを可能にする技術です。

表面Zスコア・トレーニング ボックスモンタージュ or ストリップモンタージュ

頭皮表面の特定の電極位置を組み合わせたZスコアトレーニングです。

  • ボックスモンタージュ(F3、F4、P3、P4): 認知機能の向上、抑うつ気分の軽減、思考の安定を図るために用いられます。
  • ストリップモンタージュ(C3、C4、T3、T4): 感情の全般的な安定、記憶に関する問題、感覚過敏・感覚鈍麻、睡眠の改善を促す目的で使用されます。

前述のT4-P4 プロトコルや次のC3、C4でのパワートレーニングよりも、学習するポイントが多く難易度が上がるため、慎重に行うことが多いプトロコルです。

島皮質(Insula)をターゲットにするパワートレーニング(C3、C4)

PTSD症状の「皮質における貯蔵庫(不快な身体感覚やトラウマの記憶が刻まれる部位)」と考えられる島皮質(Insula)をターゲットにするトレーニングプロトコルです。

C3やC4の電極位置で脳波のパワートレーニングを行うことで、トラウマに伴う心拍増加、痛みの知覚、身体の強張り、自律神経の乱れ、社会的関与の困難を抱えるクライアントに対して効果的であると考えられています。

当施設では、次のFz、Cz、Pzにおけるトレーニングを含め、トラウマ以外にも効果を期待できるため、非常に多く実施しているトレーニングです。

Fz、Cz、Pzにおけるシータ減少トレーニング

脳の中央線である帯状回に沿ったFz、Cz、Pzの各位置で、過剰なシータ波を抑制するトレーニングです。

過剰なシータ波を抑えることで、ストレス下で現実感が薄れる「解離(ゾーンアウト)」を制限し、「今・ここ」に意識を留めるグラウンディング力と対処スキルを高める効果があります。

また、前述のBessel van der Kolk氏著「身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法」にも、「PTSDと診断された人の多くの前頭葉で除波(シータ波など)が過剰に見られる」と記載されており、実際に過剰なケースが多いです。

Sebern Fisher(セバーン・フィッシャー)FpO2 モノポーラ・プロトコル(恐怖軽減)

Sebern Fisher氏による、恐怖軽減のためのFpO2(右眼窩の上部)でのモノポーラモンタージュです。

ブロードマン25野(脳梁下領域)および右扁桃体の過剰な活動を静めることが期待されており、発達トラウマや幼少期の虐待、愛着の課題に起因する根深い「慢性的な恐怖感や生存への脅威」を直接軽減することを目指します。

まばたきや眼球運動など筋肉の動きがノイズとして混入することが多いため、難しいケースがあります。

超低周波領域をターゲットにしたトレーニング(ISF、ILF、ISOなど)

0.1Hz未満の非常に遅い脳活動であるインフラスローオシレーション(ISO)などをターゲットにし、感情や自律神経系を最深部から整えるトレーニングです。

慢性的な不安障がい、パニック、強度の緊張、睡眠の課題、身体的苦痛を持つクライアントに対して、基礎的な安定化をもたらします。

当施設ではISF(Infraslow Fluctuation)を実施しています。詳しくはISFの記事をご覧ください。

デュアル・バイポーラ・モンタージュ(T3-Fz & T4-Pz)

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の重要な領域にまたがるT3-FzおよびT4-Pzで行う、開眼のデュアル・バイポーラ・モンタージュ(DBM)プロトコルです。

PTSDや自己認識に関連する問題にとって理想的なモンタージュであると考えられており、激しい感情のフラッシュバックなどを起こすことなく、クライアントに静寂感と自己意識の回復をもたらすことが報告されています。

アルファ・シータトレーニング(ディープステイトトレーニング)

ディープステイトトレーニングとも呼ばれ、覚醒と睡眠の間の状態へと導き、大脳辺縁系をクールダウンさせることで、トラウマ記憶を安全に処理できるようにするプロトコルです。

セッションを重ねるにつれて、フラッシュバック、驚愕反応、パラノイア、低い自尊心、恐怖、抑うつ、不安などのPTSD症状が軽減します。

ただし、アルファ・シータトレーニングは強力な変容を促すため、初回から実施することはできず、以下の事前準備が不可欠です。

  • セラピストとの十分な信頼関係の構築
  • 指先の皮膚温度を自分の意思で15分間、34〜35度に維持できること(リラクゼーションによって誘発される不安を防ぐため)
  • 1分間に5回以下のゆっくりとした横隔膜呼吸ができること
  • グラウンディングスキル(「今・ここ」に留まるスキル)を習得していること
  • 事前に感覚運動リズム(SMR)やベータ波のトレーニングを完了し、神経系が安定していること
  • ジャーナリングの習慣づけ
  • ソーシャルサポート(友人や家族などの支援体制)の確保

また、隠されていた記憶が呼び起こされることもありますし、飲酒を避けてしまうようになることもあります。

しかしながら、非常に強力なニューロフィードバックトレーニングのひとつであり、当施設でも多くの方がアルファ・シータトレーニングで改善されています。

トークセラピー(言葉による心理療法)とニューロフィードバックの違い

認知行動療法(CBT)などの言葉を介するアプローチは「トークセラピー」と呼ばれます。トークセラピーは、対話を通じてトラウマ体験の記憶を整理し、認知の歪みを修正していく過程を重視します。

重度のトラウマや複雑性トラウマを抱える方の場合、トラウマ体験を言葉で語ること自体がフラッシュバックを引き起こし、過覚醒や解離を招くリスクがあります。

ニューロフィードバックはトラウマ体験を安定した精神状態になるまで言語化しないため、トークセラピーに耐えられないほど神経系が調節不全を起こしている状態のクライアント様に対しても適応可能であり、最初に神経系の安定化(自己調節機能の回復)を図ります。

ニューロフィードバックで落ち着かせた後にトークセラピーを実施すると、今まで隠れていたトラウマが出てきたり、認知の歪みを修正しやすくなったりします。

トークセラピーとニューロフィードバックは競合ではなく、補完しあうものです。

ニューロフィードバックは学習が基本

ニューロフィードバックはオペラント条件付けをベースとした「学習」です。

ニューロフィードバックは治されるもの、治療されるものではありません。

嫌々ながら、本人の意思を無視してニューロフィードバックを受けても、全く効果はありません。

嫌々、漢字練習をさせられて、漢字を覚えられるでしょうか。

学習したいという意欲がない状態で授業を受けるのと、意欲がある状態で授業を受けるのでは、成績はどうなるのでしょうか。

当施設は、学習の準備(ニューロフィードバックを受ける準備)が整った方にのみ、ニューロフィードバックを受けていただきたいと考えています。

ニューロフィードバックを受けたいとお考えの方は準備ができていますので、ぜひ今すぐ初回面談にお申し込みください。

お待ちしております。

この記事を書いた人

東京 御茶ノ水駅 徒歩1分 ニューロフィードバックとQEEG専門施設 律駆合同会社
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