投稿日:2020/05/02

レスポンデント条件づけ・古典的条件づけ

レスポンデント条件づけ古典的条件付け
心理学
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レスポンデント条件づけは、古典的条件づけとも呼ばれます。

また、発見者の名前よりパブロフ型条件づけと呼ばれることもあります。

レスポンデント条件づけは、反射行動(レスポンデント行動)の連合学習です。

レスポンデント条件づけは、重要な無条件刺激の予兆を学習する過程ともいえます。

NLPでいうアンカリングに該当します。

反射行動(レスポンデント行動)

遺伝的に組み込まれた不随意的な行動を反射行動といいます。

唾液反射、驚愕(きょうがく)反射などが反射行動です。

生後数か月で消失する原始反射(吸乳反射、ルーティング反射、把握反射)も反射行動です。

レスポンデントとは反応のこと

レスポンデントとは「反応(する)応答(する)」ことです。

連合学習

刺激同士、刺激と反応の関連づけが生じる(変化する)学習のことを連合学習といいます。

レスポンデント条件づけで最も有名なパブロフの犬

古典的条件付け成立前
古典的条件付け成立後

レスポンデント条件づけの説明で最も有名なのがパブロフの犬です。

1902年ごろから、ロシア帝国(帝政ロシア)のイワン・パブロフによって行われた条件反射の研究がパブロフの犬です。

書籍により、パヴロフやパブロフ・イワン、イヴァーン・パーヴロフなどの表記がみられます。

犬に餌を与えると、唾液が出る

犬に餌を与えると、唾液が出ます。

唾液が出る反応は、生得的に持っている反応です。

唾液を出すように親は教えません。

この反応のことを、刺激ー反応(S-R)といいます。

Sは刺激Stimulus

Rは反応Response

また、餌が無条件刺激(US:unconditioned stimulus)です。

唾液の分泌が無条件反応(UR:unconditioned response)です。無条件反射ともいいます。

餌をベルと同時に呈示することを繰り返す

餌を与えると同時にベルを鳴らすことを繰り返します。

すると、餌を与えずにベルの音を呈示するだけで、唾液が出るようになります。

これが、レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)です。

レスポンデント条件づけ学習前のベルの音が中性刺激(NS:neutral stimulus)です。

レスポンデント条件づけ学習後のベルの音が条件刺激(CS:conditioned stimulus)です。

レスポンデント条件づけ学習後の唾液の分泌が条件反応(CR:conditioned response)です。条件反射ともいいます。

条件づけの手続き

レスポンデント条件づけの成立しやすさは、中性刺激(NS)と無条件刺激(US)の呈示する時間的関係により変化します。

最もレスポンデント条件づけが成立しやすいのが、同時条件づけです。

ただし、中性刺激(NS)と無条件刺激(US)を同時に呈示すると、条件づけの成立が難しくなります。

逆行条件付けは、条件づけの成立が極めて難しくなります。

古典的条件付け手続き
古典的条件付け手続き

ベルだけを鳴らし続けると、唾液は出なくなる(消去)

レスポンデント条件づけの学習ができた後、ベルだけを鳴らし続ける(条件刺激CSだけを続ける)と、唾液の量が徐々に減少します。

さらに、ベルだけを鳴らし続けると、唾液が出なくなります。

この手続きを消去といいます。

自発的回復

ベルだけを鳴らし続け、唾液が出なくなった後、しばらく刺激を与えない(ベルの音を鳴らさない)でおきます。

しばらく経過してから、条件刺激(CS)(ベルの音)を与えると、条件反応(CR)(唾液の分泌)が少し出るようになります。

これが自発的回復です。

自発的回復があることから、消去は条件反応を消し去るのではなく、抑制する過程であることを示しています。

般化(刺激般化)

般化(はんか)は、刺激般化とも呼ばれます。

レスポンデント条件づけが成立すると、条件刺激(CS)に似ている刺激に対しても、ある程度の条件反応(CR)があることを般化といいます。

レスポンデント条件づけの学習に使用したベルの音と似ているベルの音をレスポンデント条件づけ成立後に鳴らすと、唾液が分泌されます。

般化の大きさは、条件刺激(CS)との類似性に対応します。

また、般化は、新しい事態にも応用する、柔軟に対応するという意義があります。

分化強化と弁別

特定のベルの音のときだけ餌を呈示し、別のベルのときには餌を呈示しないと、特定のベルの音のときだけ、条件反応(CR)(唾液が出る)するようになり、別のベルのときは、条件反応(CR)が全く生じなくなります。

この手続きのことを分化強化といいます。

また、文化強化で生じた反応の文化のことを弁別(べんべつ)といいます。

ただし、条件刺激(CS)と非常に似ている刺激を用いて文化強化(弁別の訓練)をすると、条件反応(CR)が生じなくなるとともに、実験神経症という異常な行動をすることがあります。

高次条件づけ

レスポンデント条件づけが成立した後、条件刺激(CS)と第2の中性刺激(NS)を対呈示すると、第2の中性刺激(NS)が条件刺激(CS)としての機能を獲得します。

ベルの音(条件刺激:CS)で唾液が出る(条件反応:CR)犬に、光(第2の中性刺激:NS)とベルの音(条件刺激:CS)を呈示を繰り返す(餌は与えない)と、光だけで唾液が出るようになります。

これを2次条件づけといいます。

さらに、第2の条件刺激(上の例では光)を用いて、3次、4次と条件づけることも可能とされています。

このような手続きのことを高次条件づけといいます。

条件性制止

条件刺激(CS)を別の刺激(下の例では光)で、条件反応(CR)を阻害している現象が、条件性制止です。

ベルの音で唾液が分泌するレスポンデント条件づけが成立した犬に、ベルの音と光を組み合わせ、餌を与えないと、ベルの音だけ(条件刺激:CS)のときは、唾液が出る(条件反応:CR)のですが、ベルの音と光を組み合わせた刺激にすると、唾液が出なくなります。

条件性制止は、別の刺激(上の例では光)が条件反応を抑制した機能を獲得していると考えられています。

隠ぺい

中性刺激(NS)を2つ組み合わせ複合刺激にして、レスポンデント条件づけをした場合、どちらか片方だけが、条件刺激(CS)となることがあります。

たとえば、光と音の中性刺激を組み合わせ、餌(無条件刺激:US)でレスポンデント条件づけをします。

すると、光だけ呈示したとき、唾液が分泌(条件反応:CR)し、音だけ呈示したときは、唾液が分泌されないようになることがあります。

これを条件づけにおいて、一方が他方を「隠ぺい」したと言われます。

なお、どちらが条件刺激(CS)になるかは、個体差があり、どちらの刺激がより目立ちやすいかを示しています。

阻止

レスポンデント条件づけをしっかりと成立させた後、第2の中性刺激(NS)と条件刺激(CS)を複合させてレスポンデント条件づけを行ったとき、第2の中性刺激(NS)が条件刺激(CS)としての機能をほとんど獲得しない現象のことを「阻止」といいます。

例)

犬にベルの音と餌でレスポンデント条件づけを十分に行った後、ベルの音と光を組み合わせ、餌を呈示してレスポンデント条件づけを行いました。

すると、ベルの音は条件刺激(CS)となり、ベルの音で唾液が分泌される(条件反射:CR)ようになりましたが、光では唾液があまり分泌されないようになりました。

数理心理学

意識や行動を数学を使ってモデル化する数理心理学というものがあります。

数理心理学では、レスコーラ=ワグナー・モデルやコンパレータ仮説が提案されています。

レスコーラ=ワグナー・モデルの数式

レスコーラ=ワグナー・モデルの数式は下記で示されます。

ΔV=αβ(λーΣV)

ある試行での無条件刺激に対する学習の変化量=条件刺激の強さ×(無条件刺激の強さ-複数の刺激のもつ無条件刺激に対する学習の合計)

  • ΔV:施行ごとの学習量 条件刺激(CS)が獲得する連合強度の変化量
  • α(アルファ):0~1のパラメータ 条件刺激(CS)の強さ(対象にとって気付きやすいほど1、気付きにくいほど0になる)
  • β(ベータ):無条件刺激の強さに関する値(省略されている文献もある)
  • λ(ラムダ):無条件刺激(US)の強さによる連合強度の最大値
  • Σ(シグマ):総和(合計)
  • V:条件刺激(CS)がすでに獲得している連合強度の値
  • ΣV:すでに獲得している条件刺激(CS)の連合強度の総和

コンパレータ仮説

学習よりも条件反応(CR)の出力に注目し、このときの条件刺激(CS)と無条件刺激(US)との連合と、その条件刺激(CS)と連合しているほかのあらゆる刺激からの影響との競合から条件反応(CR)の強度が得られるとする説

公認心理師必須テキスト改訂2版 P155

臨床への応用

レスポンデント条件づけは、音楽と社名を同時に呈示するCMや、美男美女と共に商品を呈示するCMなどの広告宣伝にも用いられています。

また、持続的エクスポージャーや系統的脱感差法(けいとうてきだつかんさほう)による恐怖症の改善克服に使用されています。

さらに、拮抗条件づけという手法で依存症や性的執着などの改善に役立てられています。

関連記事(オペラント条件づけ)

参考文献

生理心理学と精神生理学 27(3):225-234,2009 Pavlovのノーベル生理学・医学賞について

公認心理師必須テキスト改訂第2版

藤田和生著 比較行動学 放送大学

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