これで全部わかる!ADHDとADD
「集中力が無くて、ADHDかも・・・」
「どうしたらいいのかわからず、不安やイライラで辛い・・・」
こういった気持ち、よくわかります。
そこで、本記事では、ADHDという障害、症状、治療、対処法、向き合い方についてお伝えします。
目次
ADHDとは?
ADHDとは、注意欠如・多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)のことです。
ADHDの中で、多動性が少なく不注意が優勢なタイプを、ADD 注意欠如障害(Attention Deficit Disorder)と呼ぶことがあります。
※表記や読み方を「注意欠陥」とする場合と「注意欠如」とする場合があります。どちらも同じです。
ADHDの診断基準はこちら
ADHDの主な原因は脳の異常です
ADHDの主な原因は、脳の機能障害で遺伝・環境(家庭や職場、学校)など複数の要因が組み合わされたものだといわれています。
ADHDのことを知らない方から、次のように誤解されていて、気持ちが落ち込んでいらっしゃる方がいらっしゃいます。
よくある誤解
- 育て方が間違っていた
- 怠けている
- 食生活が悪い
- 気合いが足りない
- 人と違うことをしていた
ADHDの主な原因は脳の機能異常とされています。誤解しないようにしましょう!
ADHDの特性
脳の機能異常であるADHDには、好きなことや得意なことは、飛び抜けた素晴らしい成果を出せる反面、下記のような問題を抱えています。
もちろん、個人差や状況によって変化しますので、常に下記の特性が出ると勘違いしないようにしてください。
- 忘れてしまう
- 物を無くしてしまう
- 忘れ物を頻繁にしてしまう
- たまに大切な予定を忘れてしまう
- 周囲の方に「何回いっても忘れてしまう人」と思い込まれてしまう
- 学校、仕事、デートに遅刻する
- 何をどこに置いたかすぐに忘れ、いつも何かを探している
- 何をやっていいのか、わからなくなる
- メモをしても、メモをしたことを忘れる
- 何度も同じミスを繰り返す
- 何回、伝えても忘れてしまう
計画性
- 順序付けができない
- 一度に複数のことができない
- 計画を立てられない
- 課題や仕事を始めることができない
- 計画や仕事を途中で変更してしまう
- 計画や仕事を終了できない
- 達成に必要な時間を誤って判断してしまう
集中力
- ちょっとした音でも気が散って集中力が長続きしないことがあります。
- 周囲に気が散って集中できないことがあります。
- 細かいところまで注意が向かないことがあります。
- いつもボーっとしているように見えてしまいます。
衝動性
- 思いついたことをすぐ話してしまう
- 相手の話を途中で折ってしまう
- 順番を待つことが苦手
- 整理整頓ができない
- 複数のことを同時にできない
- 感情の変化が激しいので、すぐに「かっ」となる
- 自分の思いとおりにいかないために、癇癪(かんしゃく)を起こす
- 感情的な行動をしてしまうので、集団の中で孤立
脳の機能異常だから、周囲が責め立てても効果はゼロ!
ADHDの原因は主に脳の機能異常なので、周囲が責め立てても効果はゼロ、場合によってはマイナスになってしまいます。
怒られている理由がわからず、時間が過ぎて去るのを待つだけになることもあるのです。
ただ相手が疲れるのを待っているだけですから、ほぼ意味はありません。
効果がない言い方
- 遅刻するな!
- 仕事を早く仕上げろ!
- 余計なことを言うな!
- さっさとしろ!
- 集中力が足りない!
- 気合いを入れろ!
悪循環になりやすいADHD
ADHDでお困りの方は、子どもから大人までいらっしゃいます。
ですが、ADHDのことをよく知らないために、下記のような悪循環になっていることが多いのです!
- 怒鳴っても叱っても何も変わらない→ストレスがたまる→つい怒鳴ってしまう
- 周囲に迷惑をかけてしまう→憂うつな気分→注意され、さらに落ち込んでしまい何も手につかなくなる→周囲に迷惑をかけてしまう
悪循環になると、二次障害を発症してしまうことがあります。
二次障害
二次障害というのは、何度も叱られたり、克服しようと厳しい訓練などをした結果、発症する障害のことです。
二次障害には次のようなものがあります。
- 不登校
- 引きこもり
- うつ
- 無力感、無気力感
- 非行
- 反社会的行動(暴力、麻薬など)
- 仕事が長続きしない(すぐに辞める)
- 人間関係がうまく行かなくなるs
- 依存症(アルコール、性など)
ADHDの治療や対処法!
ADHDの治療は、心理療法、環境改善が中心となります。
薬物療法の場合は、専門医のみ処方可能なメチルフェニデート(コンサータ)やアトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)というADHDの症状を和らげるお薬が使用されます。
(参考:厚生労働省|e-ヘルスネット|https://www.ehealthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html)
ADHDの心理療法
ADHDの心理療法には、対話中心のカウンセリング、プレイ・セラピーなどの他、ADHDの原因である脳の状態を変化させるニューロフィードバックがあります。
対話中心のカウンセリング
ADHDの方はマイナス思考になりやすく、物事を悲観的に考えていることが多いので、マイナスをプラスに変える思考法を学び、自尊心が傷ついた複雑な心理状態を対話形式でケアしていきます。
遊戯療法(プレイ・セラピー)
遊戯療法とは言葉で自分の感情などを上手に伝えられない方を対象に、遊びを使って心理状態をケアする心理療法です。
具体的には、ADHDの子どもとカウンセラーが同じ部屋に入って一緒に遊びながら、心を閉ざしている状態からゆっくりと心を開いていくようなケアなどをします。
幼児から小学生までが対象ですが、言葉で表現するのが苦手な中学生も対象となることがあります。
ソーシャルスキルトレーニング(社会的スキル訓練、SST)
多くの子どもが、知らず知らずのうちに学んでいる「列に並ぶ」などの、社会的なスキルをひとつひとつ訓練して学ぶのが、ソーシャルスキルトレーニングです。
ところが、ADHDをお持ちの方は周囲の状況に気づいていないことが多く、怒られたり、ほめられたりする原因の行動を学べません。
社会的スキルをひとつひとつ教える必要があるのです。
(参考:田中和代・岩佐亜紀著|高機能自閉症・アスペルガー障害・ADHD・LDの子のSSTの進め方|黎明書房)
ペアレント・トレーニング
ADHDを持つ子どもの親御様が治療者になれるという考え方に基づき、子どもを育てる技術を学ぶのがペアレント・トレーニングです。
ADHDの症状があるために、親子関係が悪くなり悪循環しているケースが多くみられます。悪循環から、好ましい親子関係へ変えていきましょう。
<悪循環の例>
問題行動→困った子だ、手に負えない→叱る、失敗→子どもが認めてもらえない気持ちになる→反抗、自信を無くす、意欲低下→親のイライラ、落ち込み→問題行動
<好ましい親子関係>
行動の観察→好ましい行動に注目→ほめる→好ましい行動→子どもの自信や意欲がアップ→親の自信、安定→行動の観察
(参考:岩坂英巳・中田洋二郎・井澗知美編著|AD/HDのペアレント・トレーニングガイドブック|じほう)
(参考:齊藤万比古・渡部京太著|改訂版 注意欠陥/多動性障害-AD/HD-の診断・治療ガイドライン|じほう)
ニューロフィードバック
ADHDの原因である脳の状態を変化させる心理療法です。
米国ではADHDの第一選択肢(一番最初に試す方法)となっています。
理想とする脳の状態に近づけるトレーニングを意識的に行い、脳の状態をコントロールできるようにする方法です。
また、会話をする必要があまりなく、会話が苦手な方にもおすすめできる方法です。
環境改善によるADHDへの対処
環境や行動を変えると、ADHDの症状が弱くなることを利用した対処法です。
まずは本人に聞くことから始める
まず始めに「本人が何に困っているのか? そもそも理解しているのか?」を把握します。
本人任せにされるより「ひとつひとつきちんと教えてもらいたい」という方もいれば、「きちんと教えてもらうこと」が苦手な方もいらっしゃるからです。
ADHDの方が困っていること(例)
- 私のことを理解してくれない
- いわれたけど理解できなくて、何をしたらいいか困っている
- いろいろといわれて嫌な気分になっている
- 怒られている理由がわからない
- そもそも何と言ったらいいかわからない
しかし、私の経験では聞いても「わからない」というケースが大半です。
本人に聞いて返事がないなら
「何に困っているの?」と聞かれても、頭の中が真っ白で「どういうこと?」と思っていたり、適当に返事をすることが多々あります。
そもそも困っていると感じていないこともあるのです。
しかし、答えが無くても、必ず聞く必要があります。
「答えが無い」という答えが得られますので。
答えがわかったらトライ&エラー
答えが得られたら、「恐らく〇〇に困っているだろう、だから△△してみよう」という仮説を立て、実施してみます。
トライ&エラーで見つけていくのです。
実際にやってみると、「聞いたことと全然違う!」「答えと違った!」ということばかりです。
ADHDに限らず、人間、そんなもんです。
「あるあるネタだ〜」と気楽に思いながら、次々とトライ&エラーをしていきましょう。
職場や仕事での対処法(例)
仕事を細かく分ける
順番を付けるのが苦手なら、仕事は一つひとつ区別するようにします。
細かく分けることで、順番を気にしたり、優先順位を逆にすることが無くなりスムーズになります。
具体的な締め切りを決める
今日の15時までといった具体的な締め切りを決めて仕事をしましょう。
納期調整に注意
納期に間に合わないことがある場合は、納期の調整を周囲の方がするようにします。
時間がどのくらい必要か、見極めるのが苦手なことがあるからです。
予定は何度も確認
会議などの予定があるときは、何度も声をかけるようにしましょう。
時間を決めても、決めた時間を忘れることがあるからです。
メモを忘れないようにする
メモを書いても忘れることが多いのなら、周囲の人から声をかけてもらえるように協力をお願いしましょう。
また、メモを目立たせたり、スマホやPCのスケジュールアプリやリマインド機能を使用するのもおすすめです。
時間を決めて気分転換をする
ADHDの方は飽きやすい特性と、一度集中すると時間を忘れる特性を持っています。
集中して仕事をしてしまい倒れてしまった、ということを避けるためにも、時間を決めて休憩するようにしましょう。
水を飲む、一人になるという方法も気分転換のひとつです。
音や振動に敏感であることを伝える
ちょっとした音でも気が散ってしまう方なら、集中力が長続きしないことを周囲の方に伝えてみましょう。
その他
職場のスタイルや方針が合わないことがあります。活躍できない場所ではなく、活躍できる仕事に変えるのも、ひとつの方法です。
悩みがあるなら、ひとりで悩まず早めに相談するようにしましょう。
学校での対処法(例)
ひとつひとつ丁寧に教える
友人が叱られている場面や、順番を待っている様子を見ても、ADHDの子どもは自分に置き換えて学習できないことがあります。
課題を切り替える
ADHDの子どもは、同じことをしていると、飽きやすい特性があります。
飽きないように、こまめに声をかけて、課題を切り替えるようにしましょう。
何度も伝える
大切なことを忘れたり、遅刻しがちです。友達や先生から、何度も伝えるようにしましょう。
やるべきことを思い出し、気付かせることにもなるので、混乱状態から抜け出しやすくなります。
納得するまで話し合う
叱るのではなく、理解しているか、どうしたらよいのか納得するまで会話をするようにしましょう。
叱ってしまうと「何をやってもダメなのだ」という思いが強くなってしまい、何もできなくなって症状が悪化してしまいます。
その他
学校の授業や集団行動で突然、違うことをしてしまうことがあると覚えておきましょう。
算数は支援学級で国語は一般学級で授業を受ける、授業中に立ち上がって廊下に出てもよいというようなルールを設定し、ある程度自由な行動を許すなど、特別な配慮が必要となるケースがあります。
学校の先生と親御様、ご本人の間でよく相談することが大切です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
お伝えしたように、ADHDの二次障害でお薬を使った治療はできますが、原因である脳の機能異常はお薬では治療できません。
しかし、脳の状態を変えていくニューロフィードバックという方法があります。
実際に、ADHDの方々が受けており、集中力の向上や落ち込みやすい状態などを改善できています。
環境改善をしても、あまり効果が見られず苦しんでいるなら、ニューロフィードバックを受けてみることをオススメします。