ニューロフィードバックの歴史 その3

この記事は約 4 分で読めます。

前回は、ジョー・カミアによる、アルファ波を自発的にコントロールできる研究結果までお伝えしました。

今回は、ニューロフィードバックのパイオニアでもあるUCLA(カルフォルニア大学ロサンゼルス校)の教授であったバリー・スターマン博士についてお伝えします。

パブロフの犬に触発された研究

イワン・パブロフはロシアの生理学者で、1903年に犬に餌を与える前にベルを鳴らすと、ベルを鳴らしただけで唾液を分泌するようになるという古典的条件づけ(パブロフ型条件づけ、レスポンデント条件づけ)を提唱しました。

このパブロフの研究と脳波を発見したハンス・ベルガーからヒントを得て、30匹の猫でスターマンはパブロフの実験を再構築し、実験中に猫の脳波を測定することにしました。

第1段階

まず、レバーと空の餌容器のある部屋を準備し、猫をいれました。

レバーを猫が押すと、チキンブロスとミルクの混合物が常に出る仕組みとなっています。

オペラント条件づけで猫はレバーを押すとエサが出ることを学習したのです。

第2段階

次に、音が鳴っているとき、猫がレバーを押しても何も起こらず(餌が与えられない)、音が止まってから猫がレバーを押すと餌が出るようにしました。

オペラント条件づけでいう、弁別の学習を猫にさせたといっていいでしょう。

このとき、猫に重要な反応がありました。

音が鳴り、音が止まるまで、すべての猫が物理的には動かずに非常に集中した状態となり、猫の脳波は12~15Hzの振幅が優位になることをスターマン博士は発見しました。

一次運動野と一次体性感覚野付近で測定される12~15Hzのことを感覚運動リズム(SMR)といい、現在のニューロフィードバックトレーニングにおいて、とても重要な役割を果たします。

ちなみに、一次運動野と一次体性感覚野付近以外での12~15Hzはローベータと呼ばれます。

第3段階

続いて、スターマン博士は、猫が自由にSMRを優位にできるかどうかを実験しました。

猫がSMRを0.5秒以上生成したら、猫にチキンブロスとミルクを与え、猫はSMRを猫の意志で優位にすると、餌が与えられることを学習し、猫はSMRを優位にできるようになりました。

この結果を1967年医学雑誌Brain Researchに発表しました。

NASAからの委託研究

NASAの宇宙飛行士、従業員は、液体燃料ロケットの燃料であるモノメチルヒドラジン(引火性、発火性があり肝臓・腎臓・腸・膀胱に障害を起こし、発がん性のある有機化合物)に接することがあり、幻覚、吐き気、てんかん発作に苦しんでいました。

これらの発作を低減する方法を探っていたNASAは、スターマン博士に研究を依頼しました。

50匹の猫を使った研究

50匹の猫の脳波を測定しながら、10mgのモノメチルヒドラジンを猫に投与しました。

40匹の猫は1時間後に嘔吐を含む発作を起こしましたが、10匹の猫は平均2時間以上経過してから発作を起こしました。

また、25%の猫は発作自体を起こしませんでした。

この発作を起こさなかった猫、発作までの時間が長かった猫は、以前SMRを優位にできる実験に参加しており、モノメチルヒドラジンの投与の実験でもSMRを優位に発生させていました。

この結果からスターマン博士は、猫がSMRを発生させる条件づけ学習により、脳を機能的および物理的に変化させ、他の猫が苦しんでいる発作に対して免疫を与えたと結論づけました。

ヒトへの応用

次のステップで、ヒトに対してもこれらの条件づけ学習が役立つことを確認しました。

大発作の既往がある実験参加者に対して、SMRが優位になったとき、緑ランプを点滅させ、SMRが優位でなかったとき、赤ランプを点滅させるニューロフィードバックトレーニングを、実施しました。

規定された回数のセッションの後、実験参加者はほとんどの時間、緑色のライトをオンにし、赤色のライトをオフに保つことができるようになりました。

その後、ニューロフィードバックトレーニングにより、大発作を最大65%減少させることができることが明らかになりました。

NASAが望んでいたような結果となり、NASAはニューロフィードバックを使用して、非常にストレスの多い状況でもパイロットが集中する能力を向上させてきました。

そして、ニューロフィードバックの今

脳に対する高度な研究が進み、ニューロフィードバックがてんかんやADHDだけでなく、心的外傷後ストレス障害、外傷性脳損傷などの治療にも非常に効果的であるという証拠が増えてきました。

この記事を書いた人

東京 御茶ノ水駅 徒歩1分 ニューロフィードバックとQEEG専門施設
ニューロフィードバック
初回面談
ご予約は
こちら
ページ上部へ