ニューロフィードバックの歴史 その1
今回から、数回にわたってニューロフィードバックの歴史についてお伝えさせていただきます。
リチャード・カートンによる脳内の電気信号の発見
1875年 明治8年にイギリスのリチャード・カートンが動物の脳で電気が流れていることを発見しました。
人伝えなので確かな情報ではありませんが、1875年当時、脳に電気が流れていることは重要視されず、反応は無かったそうです。
とはいえ、リチャード・カートンの死後、ハンス・ベルガーによる脳波の計測、発見に繋がったのですから、現代から考えればとても重要な発見をされていたといえます。
ちなみに、西南戦争が明治10年ですから、日本では不平士族の反乱を明治政府が力でねじ伏せていた時期といえるかもしれません。
ドイツの精神科医 ハンス・ベルガー(Hans Berger)
ハンス・ベルガーはドイツのイエナ大学の精神科教授であり、1924年に人類で始めてヒトの脳波を記録し、5年後の1929年に論文で発表しました。
発表時は誰からも否定され、信じられないほどの嘲笑があったそうです。
その後、エドガー・エイドリアンなどによる追試もあり1937年に国際的に脳波が認められるようになりました。
余談ですが、1937年はクエン酸回路がドイツのハンス・クレブスによって発見され、日本では戦艦大和の起工や仙山線(後に日本初の交流電化)の開通、トヨタ自動車工業株式会社の設立がありました。
脳波はマイクロボルトという非常に小さい電圧ですから、紙面に記録できるようになるまで大変ご苦労されたと思います。
実際に、当時の脳波記録を拝見すると綺麗な脳波がピックアップされていますが、現在でも綺麗な脳波をピックアップするのは、職人技とも言えるくらい難しいので、感動を覚えます。
個人的には100回くらい練習すれば綺麗に脳波を測定できるようになると思います・・・
この時ハンス・ベルガーは、1秒間に10回、振動する波をアルファ波と名付け、脳波の波形に乗っている小刻みな揺れ(1秒間に20回程度)をベータ波と名付けました。
さらに、健康な成人が閉眼したときにアルファ波(一般的には8~12Hz)が観測され、開眼するとベータ波が観測されることも発見しました。
このアルファ波が抑制される現象のことをアルファブロッキングといいます。
アルファブロッキングが発生しない方もいらっしゃいますが、何らかの問題を抱えていることが多く、ニューロフィードバックトレーニングでアルファブロッキングができるようにトレーニングすると、問題が解決されるか減少するなど良い方向に変化します。
最初に見つけた脳波がアルファ波ですから、アルファ波を基準にしてアルファ波よりも早い脳波を速波、遅い脳波を徐波と言います。といっても、臨床ニューロフィードバックでは、速波や徐波といった言葉はあいまい(範囲が大きすぎる)なので使いません。研究者においてもアルファ波、ベータ波などの言葉の範囲が異なることもあり、個人的にはHzで表した方が良いと思っています。
ちなみに、Electroencephalograph:EEG(日本語で脳波)という言葉を作ったハンス・ベルガーですが、晩年はうつ病(現在の鬱病とは診断基準が異なるので注意)と重度の皮膚感染症に苦しみ1941年に自殺しています。