学習障害(LD)のニューロフィードバック
発達障害のひとつである学習障害を改善する手段として、ニューロフィードバックがあります。
しかしながら、やみくもに学習障害にニューロフィードバックが効果があるとは言えません。
脳波には個人差がありますし、同じ学習障害だからといって、同じニューロフィードバックトレーニングをするだけでは、効果は出ないからです。
学習障害(LD)に効果的なニューロフィードバックを受けていただくためにも、学習障害(LD)について、まずは確認していきましょう。
目次
学習障害とは
学習障害は、教育的な立場と医学的な立場で意味合いが少し変化します。
教育的な立場であれば、知的発達に遅れは無いが、話したり聞いたり、推論したりするなど学習面での能力の障害や遅れがある特徴や個性として捉えます。
医学的な立場による学習障害とは、一般的な知的能力に遅れや障害はありませんが、書字(字を書く)・読字(字を読む)・算数の障害(計算できない)を抱えている状態です。
学習障害を英語にすると
LDと略されることが多い学習障害を英語にすると、いくつかの表現があります。
- Learning Disabilities(教育的立場のときに多く用いられる)
- Learning Disorders(医学的な立場のときに多く用いられる)
また、多くの方と異なった学習方法をするという観点から、次のような表現もあります。
- Learning Differences(学び方の違い)
- Speciffic delay of mental development(特定領域の発達遅延)
学習障害だけでないことも
学習障害だけではなく、同時にADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)なども伴っていることもあります。
いずれにしても、得意分野を伸ばし、困難のある分野を工夫して学習することが大切です。
ちなみに、発達障害者支援法には、学習障害は含まれていますが、知的障害は含まれていません。
学習障害向けのニューロフィードバック
学習障害をお持ちの方の脳パターンは、徐波(じょは)と呼ばれるデルタ波、シータ波、そしてアルファ波の振幅が大きく、非常に遅い脳波活動となっていることが多いです。
人は寝ると徐波と前頭側にアルファ波の振幅が大きくなりますので、起きているはずなのに頭の中は寝ていると言ってもいいでしょう。
また、デルタ波、シータ波、アルファ波の振幅が大きいと、情報が脳に入るとき障害になり、情報が上手く伝わらず、欲求不満、不安、イライラなどを感じる方が多いです。
ニューロフィードバックのトレーニングでは、振幅が大きくなっている波を抑え、脳波パターンを正常に近づけることができます。
学習障害に対するニューロフィードバックのエビデンス
学習障害に対してニューロフィードバックが効果があるとした研究結果は数多くあります。
Kirtley&Carmodyによるケーススタディでは、ニューロフィードバックにより、読解力が400%向上し、読解力が109%向上し、読解力が250%向上したことが示されています。(Kirtley&Carmody、2005)
また、注意力と作業記憶(ワーキングメモリー)の改善にも気が付かれるケースが多いようです。
実際、臨床をしていると、学習障害に対する手ごたえがありますので、学習障害に対してニューロフィードバックは効果があるといえる可能性が非常に高いと感じています。
しかし、学習障害に対するニューロフィードバックの統計的なエビデンスを探すとなると、注意が必要です。
一言で学習障害といっても、読みは苦手だけれども、計算は得意ということもありますし、日本語なら大丈夫だけれども英語になると読み書きが困難になるという方もいらっしゃいます。
また、どのようなデザインで行ったのか、どのようなニューロフィードバックを行ったのか、研究手法についてもチェックする必要があります。
さらに、脳波は個人差が大きいことも、考えておく必要があります。
QEEG検査は必要か否か
学習障害の方がニューロフィードバックで改善させたいとお考えなら、QEEG(定量的脳波測定)を受けた方がいいでしょう。
しかし、脳波は個人差が大きいため、脳波だけで判断するのは間違いです。
また、下記にも注意が必要です。
- 体を動かすと脳波以外のもの(ノイズ)が乗ってしまう
- 筋肉に力を入れるとノイズが発生してしまう
- 学習障害特有の特徴が脳波に出ないこともある
- 学習障害でなくても学習障害のような脳波になることもある
- QEEGも心理テストと同じように、テスト結果だけで判断することは望ましくない。受けている方の状態や気分にも注意する必要がある
残念なことに、適切なQEEGが出来ていない施設も多く見受けられます。
学習障害に効果のあるニューロフィードバックとするためにも、QEEGにこだわることなく適切な施設を選ぶようにしましょう。
自宅でニューロフィードバックをするには
ご自宅でニューロフィードバックを行うときは、センサーを上手く付けられるか、周辺環境のノイズは問題ないかなどに気を配る必要があります。
日本は木造住宅が多いですし、電磁波による干渉も大きいため、脳波をきちんと測定するには、難易度が高いです。
ノイズが多い脳波でニューロフィードバックをしてしまうと、効果がないばかりか、逆効果になってしまいます。
一般的には、Wi-Fiを切断する、電源コードを外してバッテリーだけで行う、アースを取るなどの対策が必要なことが多いです。
また、正確にセンサーが取り付けられ、正確にフィードバックしているかのチェックも必要です。
ご自宅でニューロフィードバックをされたいのでしたら、必要なスキルを身に着けてからニューロフィードバックのトレーニングを行うようにしましょう。
学習障害のグレーゾーンであっても、ニューロフィードバックは受けられる
ニューロフィードバックは健康な方でも受けられる脳の学習ですので、学習障害でグレーゾーンであっても、受けることができます。
本来、ニューロフィードバックは、治療ではなく学習です。(正確にいうとオペラント条件付けによる学習)
学習が治療に役立つから治療に使っていると考えて間違いありません。
実際、自分自身の能力を向上させたい、夢を叶えたい、スポーツの成績を上げたいといった目的でも使用され結果が出ています。
ニューロフィードバックで効果を上げるコツ
- 正しいニューロフィードバックができる施設を選ぶ
- 得意な能力を伸ばし、苦手な能力を少しでも伸ばすことを大切にする施設を選ぶ
- 自宅で行うときは、正しいスキルを身に着けてから行う
- ニューロフィードバックは自発性があった方が効果が高いので、良くなりたい、改善したいという気持ちを大切にする
- 英語の単語覚えや数学の問題を解くなど、身につくまで学習は何度も必要。途中で諦めないことが大切
- 数学が得意な人もいれば、苦手な人もいるように、ニューロフィードバックは学習だから、必要な回数や結果に差が出てしまうことを覚えておく
また、本来のニューロフィードバックとは異なる方法をニューロフィードバックといっている施設も存在しています。ご注意いただきたいと思います。
ニューロフィードバック・QEEG専門施設では、学習障害に対して効果のあるニューロフィードバックトレーニングを提供していますので、ぜひ受けてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
- Q.学習障害(LD)にニューロフィードバックは効果がありますか?A.様々な研究でニューロフィードバックは学習障害(LD)に効果があるという結果が多いです。
ただし、学習障害に大きく3タイプがあるように学習障害といっても、困っていることは人それぞれですから、ニューロフィードバックのトレーニング内容を状態に合わせてカスタマイズする必要があります。 - Q.ニューロフィードバックの効果はどこで受けても同じですか?A.ニューロフィードバックを提供するセラピストのスキルによって、効果に差が生じてしまいます。
また、使用するニューロフィードバックのソフトによっても、効果に差が出ます。
当施設では、臨床用のニューロフィードバックソフトウェアを使用しております。 - Q.QEEG検査とは?A.QEEGとは定量的脳波測定のことです。脳の電気的活動を総合的に確認するもので、脳波データと規範データベースを統計的に比較します。
規範データベースの範囲内であっても、学習障害でお困りの方もいらっしゃいますし、多少外れていても、何の問題もない方もいらっしゃいます。
あまりにもデータベースを信じてしまうと、様々な問題が発生しますので、ご注意ください。