ニューロフィードバックとバイオフィードバックの違い
日本でも少しずつ普及してきているニューロフィードバックとバイオフィードバックですが、同じ部分もあれば違う部分もあります。
ニューロフィードバックを臨床で行い、バイオフィードバックについても理解のある私が詳しく解説させていただきます。
誤解されているケースが多いので、ぜひこの機会に最後までお読みください。
目次
バイオフィードバックとは
バイオフィードバックとは、身体の情報をセンサーで測定し、情報を戻す(フィードバック)することで、身体をトレーニングするものです。
医療分野、心理分野、スポーツの分野で用いられていることが多いです。
腕立て伏せのバイオフィードバック
例えば、腕立て伏せでバイオフィードバックを行ってみましょう。
- 肘を曲げて、どこまで胸を下げたら1回とカウントするかを決めます。
- 決めた位置まで胸が下がったら、音でカウントされたことを知らせる仕組みを準備します。
- 腕立て伏せを行う回数を10回と決めます。
- 腕立て伏せを行います。
- カウントする場所まで胸の位置を下げると、音が鳴ります。もし、カウントする位置まで胸の位置が下がらなかったら、音は鳴りません。
- 音が10回鳴ったら腕立て伏せは終了です。
単に腕立て伏せを10回するときよりも、バイオフィードバックの方がサボることができなくなってしまいますが、腕立て伏せが出来たということが明確にわかります。
また、筋肉を鍛えることを目的に腕立て伏せを行っているのであれば、腕立て伏せが出来たことが報酬となり、オペラント条件付けによる正の強化(腕立て伏せで決めた位置まで胸を下げる頻度が増加)となり得ます。
さらに、正しい姿勢で腕立て伏せが出来ているか、呼吸は止まっていないかもフィードバックするとより結果が出やすくなります。
皮膚表面温度のバイオフィードバックトレーニング
医療・心理分野で用いられる、皮膚の表面温度のバイオフィードバックについても解説していきましょう。
ご存じの方も多いですが、人間は緊張すると皮膚の表面温度が低下し、リラックスすると高くなります。自律神経で交感神経が優位になると体温が低くなり、副交感神経が優位になると体温が高くなることと同じです。
(実際には副交感神経系が優位になり過ぎると状態が変化するなど、かなり複雑ですが、わかりにくくなってしまうので、今回はシーソーのように単純に考えてみてください)
皮膚の表面温度を使ったバイオフィードバックの手順です。
手の指先の温度変化が大きいので指先にセンサーをつけることが多いです。
- 指先にセンサーを貼ります。
- 体を安静にし、指先の温度が安定するまで待機します。
- 体を動かすことなく、体温が上がるように1分間意識します。リラックスすると体温が上がります。
- 体温が上がったら、音と光で体温が上昇したことを示します。示すことがフィードバックに該当します。
- 安静にした状態に意識的に戻します。
- 体を動かさずに、体温が下がるように1分間意識します。興奮・緊張すると体温は下がるのがヒントです。
- 体温が下がったら、体温が上がったときとは別の音と光で体温が下がったことを示します。示すことがフィードバックに該当します。
- 安静にした状態に意識的に戻します。
- 終了です。
一見、簡単そうに思えますが、自律神経失調症などで自律神経を上手くコントロールできない方は難しいですし、常に過緊張の状態にいる方、お酒が好きな方は、リラックスして体温を上げるトレーニングが苦手です。
上記のように、自分の力で自分の体をコントロールする感覚を繰り返しトレーニングで身に着け、コントロールできるようにしていくのがバイオフィードバックトレーニングです。
ニューロフィードバックとは
バイオフィードバックの一種で、脳波など脳機能に関する指標をフィードバックするものがニューロフィードバックです。
ニューロフィードバックのことをEEGバイオフィードバック(脳波のバイオフィードバック)と呼ぶこともあります。
ニューロフィードバックのやり方
ニューロフィードバックのやり方を簡単に説明します。
- 脳波の状態に合わせて、プロトコル(プログラム)を選びます。
- 頭皮やひたい、耳たぶにセンサーを付けます。
- センサーが正確に付いているか測定します。
- 脳波を確認し、報酬の設定を行います。報酬は音と映像で行います。
- クライアント様には画面を見ていただき、音を聞いてもらいます。
- 20分程度行ったら終了です。
もちろん、ニューロフィードバックをするにはWindowsマシンと作動増幅器(アンプ)、センサー、インピーダンスメーター、モニター、専用のソフトなどの機材が必要で、機材を揃えるには200万円ほどの費用がかかります。
ソフトは効果の高い臨床用のもの、家庭用のもの、フリーのものがあります。
ニューロフィードバックとバイオフィードバックの共通点と差異点
ニューロフィードバックはバイオフィードバックの一種であることは疑いの余地はありません。
下記がニューロフィードバックとバイオフィードバックの共通点です。
- 機械を使って身体の情報をフィードバックする。
- オペラント条件付け(行動の出現率を上昇させる正の強化)。
しかし、脳波を使ったニューロフィードバックは、バイオフィードバックと異なる点もあります。
- 意識的に何かをしようとする必要があまりないトレーニング方法もある。
- 脳に対するオペラント条件付けをしたいので、意識が邪魔になることもあるし、意識的に良い方向にすることもできる。
効果のあるニューロフィードバック療法は難しい
ADHDを始めとする発達障害、依存症、トラウマなどに効果のあるニューロフィードバック療法ですが、誰がやっても同じ結果にはなりません。セラピスト(施術者)の腕によって効果が変わってきます。
脳波に雑音が入っていないか、正しい測定が出来ているか、rowEEG(生の脳波)の状態確認、クライアント様の心理状態や眠気の有無、どのプロトコル(プログラム)を選択するのかなどなど、セラピスト(施術者)の腕が問われる部分が多々あるからです。
残念ながら、多くのセラピスト(施術者)は効果のあるニューロフィードバック療法を提供できていないことが多いのが現状です。間違った測定方法でニューロフィードバック療法をしている場合もあります。
BCIA(米国にあるバイオフィードバックの資格を認証している団体)認定の講習を受けるなど、ニューロフィードバック療法のやり方をしっかりと学び実践できる方のトレーニングを受けるのがベストです。
ニューロフィードバックとQEEG専門施設では、講習を受けるだけではなく、書籍などにも目を通し、日々新しくなっていくニューロフィードバックのスキルアップを常に行っています。もちろん、自宅でもニューロフィードバックを受けられるサポートも提供しています。
まずは、ニューロフィードバックが適用になるか初回面談にお申し付けください。
よくある質問
- Q.バイオフィードバックとニューロフィードバックは異なるものですか?A.バイオフィードバックには様々な種類があり、バイオフィードバックのひとつがニューロフィードバックです。ニューロフィードバックのことをEEGバイオフィードバックと呼ぶ場合もあります。
- Q.ニューロフィードバックのやり方は難しいですか?A.クライアント様(受ける側)は簡単ですが、セラピスト(施術者)側はかなり難易度が高いです。難易度が高いためセラピストになる途中で挫折される方もいらっしゃいます。