トラウマの記憶は作られて変化する
トラウマに悩んでいる方をカウンセリングしていると、今のあなたにとっての事実があなた自身を苦しめているというケースが後を絶ちません。
人間は記憶を忘れますし、自らの記憶を混ぜて、別のものにすることもあるからです。
ご自身にとって好ましい方向に作用すればいいのですが、なかなか思い通りにはいかないものです。
そこで、記憶が変化してしまう理由と対処方法についてお伝えいたします。
目次
どうして、記憶は変わってしまうの?
諸説ありますが、人間の記憶は「素早く思い出す」ことに重点をおいている点と、言葉で記憶が誘導されてしまい、全く異なる出来事と混ざってしまうという点が記憶が変わってしまう有力な説です。
例えば、「危険を察知したとき、どのような行動を取れば生き延びることができるのか」について考えてみましょう。
現在の日本では、危険を常に意識することなく生きることができますが、狩猟採取生活であった時代は危険を察知したら行動しなければ生き延びられない環境と考えられています。
「どの行動をするのが、最も生き延びる可能性が高くなるのか」ということを考えると、最適だと考えられる行動を即座に実行するために、多少記憶が変わっていたとしても、素早く思い出すことが優先されます。
素早く行動したい人間
記憶に限ったことではありませんが、人間は「おそらくこちらが正しい」と適当に判断しがちです。
事実より感情で、思いつき、思い込みで「正しい」とするのが人間です。
能力を節約するため、短時間で判断して行動できるようにするために、それなりに判断してしまうことを心理学ではヒューステリックといいます。
教育現場(学校)で、職場で「素早く答えを出す」ことで「報酬」がより得られるシステムですので、正確より素早さが学習されてしまう理由もあるかもしれません。
特に職場では「正確」というのは不明なことが多い(答えがない)ので、素早くという部分がより強化されてしまいます。
また、危険が迫っていて生き延びるという状況を考えた時、素早く行動することで生き延びる可能性が高くなることが多いといった理由もあるでしょう。
即座に行動するには準備が重要
危険が迫ったとき、最も速く行動するには、準備がとても重要です。
避難訓練も準備のひとつですし、訓練で危険が迫ったときの行動を反復練習しておくことで、考えずに避難行動に移ることができます。
最近、災害が増えていますので、避難訓練の実施が重要になってくるかもしれません。
もし全ての出来事を正しく覚えていられるのなら、試験で満点が取れる
話を戻します。
もし全ての出来事を正確に覚えているのであれば、学校の宿題はスムーズにできるだろうし、辞書だって1回ひけばOKだし、漢字だって1回書けば覚えられるなんて・・・うらやましい限りです。
あがめたくなります。
世の中の天才と言われる方々は、一度聞いたら忘れないのでしょうね・・・
個人的な願望や憶測が入ってしまいました。
一般的には間違って思い出す、間違って記憶してしまうことがありますので、試験で満点をとることは非常に困難です。
記憶は言葉で誘導される
とっても有名な話(心理学実験)なのですが、ビデオを見ていただいた後に、ビデオには存在しなかったことに対して質問をすると、適当に話を作ってしまいます。
例えば、車が走っている動画を見せた後、別室で「車は猛スピードで走っていましたか?」と聞くと、動画の車はゆっくり動いていたのに、「すごい速さで動いていました」というように答えてしまいます。
詳しく知りたい方は「エリザベスロフタス目撃証言」で検索してみてください。
冤罪が発生する理由のひとつでもあります。
映像だけのトラウマは別として、言葉が入っていると他の出来事と混ざりやすくなる
ここからは、実例を織り交ぜてご説明したいと思います。
トラウマを言葉にして繰り返している方がいらっしゃいました。
カウンセリングやニューロフィードバックトレーニングを実施することで、改善、変化していきますと、「トラウマの出来事に別の記憶が混ざっていたのかもしれない」とご本人様からおっしゃるケースがありました。
恐らくトラウマの記憶にある言葉に誘導されたイメージが、何度も何度も思い出してしまうことで、トラウマの記憶と結びついた結果、混ざってしまったのだと考えられます。
似たようなケースは本当に多いです。
また、私の臨床経験的なものだけですが、映像だけのトラウマでも、混ざってしまっている感じがします。
トラウマの克服手段
トラウマの克服手段には、様々な方法があります。
- ニューロフィードバック
- 自我統合療法EUT
- トークセラピー
- 認知行動療法
- EMDR
- その他
ニューロフィードバックでトラウマを克服するトレーニングには、様々な方法があります。
- ディープステート(アルファシータ)トレーニング
- LORETA Zスコアトレーニング
- サーフェスZスコアトレーニング
- C3,C4(島皮質)を対象にしたトレーニング
- 19チャネルのサーフェスZスコアトレーニング
- 帯状回(Fz、Cz、Pz)に沿ったシータ減少トレーニング
- S.フィッシャーによるFpO2でのモノポーラモンタージュトレーニング
- 低周波トレーニング
- Van der Kolkによるバイポーラモンタージュトレーニング
- PTSD向けDBMプロトコルによるトレーニング
PTSDを含めたトラウマの問題でよく使われるのが、ディープステート(アルファシータ)トレーニングですが、実施する前に以下の準備が必要です。
- クライアント、セラピストお互いの信頼感
- ソーシャルサポートシステム(友達や家族)
- グランディングスキルのトレーニング
- ジャーナリング
- 横隔膜呼吸(トレーニング開始の1~2週間前に開始)
- 体温トレーニング:何日か4、5回に分けて、少なくとも20分間、指先の温度を34.0~35.0°Cに保つ能力の獲得
- 個人および家族の安全確保
- 感情的な危機に対する、todoリストの準備
- 実施の許可:抑圧された記憶が明るみに出る可能性があります
- 「手放す」意味の理解と実施
- ポジティブなビジュアライゼーションの作成
- 内部表象の変化
少しハードルが高いように思えますが、実際には難しくなく、多くの方がディープステート(アルファシータ)トレーニングでPTSD(トラウマ)や依存症を手放しています。
ディープステート(アルファシータ)トレーニングについては、別の機会に詳しくご紹介したいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
トラウマを含め、記憶は変化します。
まるで成長するように変化していきます。
ご自身にとって望ましい記憶はそのままに。
黒歴史は解釈を変えて。
ご自身にとって厳しい記憶は、より望ましい方向に変化をさせていきましょう。