投稿日:2019/08/19

トラウマの克服

心理学
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「小学校の時にいじめられたトラウマを何とかしたい」

「性的被害のトラウマを何とかしたい」

様々なトラウマを抱えて、当施設を訪れる方が絶えません。

トラウマを克服するために知っておこう!
トラウマの定義

もともと、トラウマという言葉は「身体の外傷」という意味で使われていました。

2019年現在、トラウマというと「心的外傷」心の傷を意味することが多くなりました。

では、一体いつ頃からトラウマ=心的外傷となったのでしょうか?

19世紀後半、トラウマ=心的外傷となった

論文で、心的外傷という意味でトラウマという言葉が使われ始めたのは、1892年の「ヒステリー現象の心的機制について<予備報告>」という論文(ブロイアー & フロイト)のようです。

この論文は『ヒステリー研究』という書籍にも、入っています。

『ヒステリー研究』は日本語訳もされ、出版されています。

論文にトラウマという言葉を用いるには、トラウマが心的外傷という意味になっている必要があるため、1892年以前にトラウマという言葉は心的外傷の意味で使われていたと思います。

ちなみに、トラウマという言葉を使う前は「情動的ショック」「爆発する情動」「強い情動」というような言葉を使っていたようです。

「情動的ショック」「爆発する情動」「強い情動」といった方が、トラウマを理解しやすいかもしれません。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とトラウマ

トラウマによる障害として、PTSD(心的外傷後ストレス障害 Post-Traumatic Stress Disorder)があります。

日本でも使用されている米国精神医学会診断統計マニュアル第5版(DSM-5)の基準によれば、PTSDとは、「実際にまたは危うく死ぬ、深刻な怪我を負う、性的暴力など、精神的衝撃を受けるトラウマ(心的外傷)体験にさらされたことで生じる、特徴的なストレス症状群」のことです。

トラウマ体験の例

災害、暴力、性被害、事故、戦闘、虐待などがトラウマ体験といえます。

また、災害、暴力、性被害、事故、戦闘、虐待などを目撃することや、知ることもトラウマとなります。

さらに、災害救援者の体験もトラウマになりえます。

なお、災害、暴力、性被害、事故、戦闘、虐待などよりも軽い精神的衝撃が、何度も繰り返されるとPTSD様症状がでます。

当施設では、PTSDの基準に該当しないトラウマも含め、一般的にいわれているトラウマをトラウマとしています。

衝撃的なこと

死ぬかもしれないような強烈な体験をするとトラウマになります。

ただし、同じ事柄でも人によって解釈や感じ方が異なるため、同じ体験をした全員がトラウマを抱えることにはなりません。

衝撃的なことがトラウマになるかは、個人差があります。

繰り返される体験

多くの方は、漢字や公式を1回で完璧に覚えられないと思います。そこで、予習・復習をして何回も繰り返し使うことで覚える努力をします。

漢字や公式と同じように、何度も繰り返し体験することで、トラウマになってしまいます。

例えば、ギャンブルは、ある確率で当たりが出ますが、いつ当たりになるのか予想できません。

「次こそ当たりが出る」と思い外れ、また「次こそ当たりが出る」と思い外れを繰り返し、突然「当たりが出た」となると感情が爆発します。

当たりが出た嬉しい感情を再度体験したく、繰り返していくうちに、深みにハマっていきます。

トラウマもギャンブルと同じように、いつ衝撃的なことがあるのか予想できない状況で、それなりの頻度で衝撃的なことを体験すると、トラウマになってしまうのです。

マイノリティやいじめなど、自己存在感を長期にわたって切り崩すような経験

慢性化したいじめや、苦手意識もトラウマになり得ます。

実際、当施設には小学校でのいじめにより、自信が無くなってしまい、何をしてもできないというような考えになってしまっている方がいらっしゃっています。

感情が小さく揺さぶられるような体験

感情が小さく揺さぶられるような体験もトラウマになります。

多くの場合、問題になることはありません。

恐怖を少し感じた映画や、親に叱られたなどの体験が該当します。

ただし、同じことが何度も繰り返されてしまうと、トラウマによる問題が発生してしまいます。

意識すればするほど、トラウマは克服できなくなる

同じような体験が繰り返されると、トラウマは強化されてしまいます。

トラウマは記憶だからです。

例えば、

電車に乗ると恐怖感を感じてしまうトラウマがあるとします。

克服しようと、電車に乗ろうとしたり、電車に乗ることを考えたりすると恐怖感を感じます。

克服しようと、何度も同じことを繰り返してしまうと、トラウマが強化されてしまい、克服できなくなってしまいます。

電車に乗ると恐怖感を感じてしまうトラウマを克服するために、暴露(ばくろ)療法がありますが、方法を間違えると恐怖感が強くなってしまうので注意が必要です。

脳にある記憶には時間がない

私たちの記憶は、時系列で脳内にあるのではありません。

何らかの脅威が身に迫ったとき、記憶を順番に探していたら、助かる命も助かりません。

最善の方法を見つけやすくするため、といってもよいでしょう。

神経学者 ジュラルド・エデルマン博士​(1972年 ノーベル賞)

「記憶は脳の一部に貯蔵されているのではなく、思い出す瞬間に、毎回、再構築される。

脳内で起こっていることは、シノプスとシノプスが結合し記憶の回路(神経回路)が作られているだけ。

その神経回路に、電気信号が伝わることで『思い出す』わけだけど、それはその瞬間瞬間に、新たな現実を創り出すことと変わらない」

別の言い方をすると、同じような体験を2年前と3年前にしたとします。

2年前と3年前の体験を脳内で混ぜてしまうので、記憶を混同したり、あやふやになったりします。

記憶には強弱がある

何度も思い出す必要がある記憶(強い記憶)もあれば、なかなか思い出せない記憶(弱い記憶)もあります。

いつも使っている漢字は簡単に思い出せるけど、ほとんど使わない数学の公式はなかなか思い出せないのです。

すべての記憶を完全に思い出せるのなら、漢字テストや歴史の年号など記憶の問題で100点満点取れるはずです。

しかし、多くの方は、覚えていません。

即座に対処するためにあるトラウマ

衝撃的な体験がもう一度訪れたとき、即座に対処できるようにしてくれるのもトラウマです。

別の言い方にすると、「トラウマは自分のために作った」といえます。

しかし、トラウマで悩んでいる方にとって「トラウマは自分のため」と聞くのは、とても嫌なことです。

ただ以下のことは、覚えておいてください。

トラウマを拒否したり否定したりするのはNGです。

特に、トラウマを消そうとすると、自分を消すことに繋がるなるので、避けましょう。

「あるがままトラウマを受け入れる」と誤解されてしまうかもしれませんが違います。

コップが置いてあるように「トラウマがある」ことを認識する感じです。

コップが置いてあることを受け入れる・・・何だか頑張ってる感じ

コップが置いてある・・・状態を表しているだけ

あなたのトラウマはどの程度?

重いトラウマは思い出せない

最も苦しいトラウマ的な記憶は、非言語的であり身体的な記憶として隠されている(van der Kolk, 1996)

本当に重いトラウマは、思い出すことはできません。

似たようなことが起こりそうになったら、身体が反応します。

違う言い方にすると、トラウマがあることに気がつきにくいのが重度なトラウマの特徴でもあります。

  • ある場所を訪問したら、突然意識を失った。
  • ある体験を思い出したら、逃げ出したくなった。

ちなみに、意識を失うのは凍結反応(凍りつき、不動化)という反応です。

凍結反応になると、副交感神経の腹側迷走神経複合体(ふくそくめいそうしんけいふくごうたい)の動きが弱まり、副交感神経の背側迷走神経複合体(はいそくめいそうしんけいふくごうたい)しか動かないようになります。

「ショックで言葉を失った」状態のように、何かに圧倒され、自分ではコントロール不可能と感じているときに出る反応が凍結反応です。

重度なトラウマを克服するには、専門家の助けが必要です。

自分だけでトラウマを克服しようとすると、悪化することがあるので気をつけてください。

トラウマを思い出せるけど、紙に書けそうもないのなら中程度

中程度といっても、「思い出すのも辛いし正直思い出したくないトラウマ」です。

無理に話したり、紙に頑張って書こうとしたりすると、トラウマが悪化する可能性が高いです。

「トラウマ、紙に書けるかな?」と思った瞬間の感覚で判断してみましょう。

チャレンジは1回限り。

もう一回・・・というのは絶対にダメです。

重度なトラウマと違って、自分でトラウマがあることに気がつきやすいレベルでもあります。

中程度とはいえトラウマを克服するなら、専門家の助けが必要なレベルです。

軽いトラウマなら紙に書ける

紙に書けるトラウマなら、ある程度ご自身でもトラウマを克服できるかもしれません。

ただし、トラウマ克服のやり方を間違えると、悪化することがあるので、自分でトラウマを克服しようとすることは、正直お勧めできません。

トラウマを克服する方法

トラウマを克服する方法を自分でやったら、上手くいかず、悪化してしまった方がいますので、正直お伝えしたくありません。

しかし、どのようにトラウマを克服していくのか、知らないと不安になると思いますので、簡単に説明させていただきます。

過去の選択は、全てベストなことを選択していることを知る

過去の選択を悔やむのではなく、ベターでもなく、ベストな選択をしたということを知りましょう。

「過去の選択を誤ってしまったから、トラウマができた」と考えている方がいらっしゃいます。

これは、今の状態から過去を振り返っているから。

今から過去の選択を振り返ると、誤ってしまったと今、思うだけで、選んだ当時はベストだと思って選択しています。

多様な解釈(考え)があることを知る

物事には、様々な立場、見方があります。

同じことでも、AさんとBさんで異なる考え(解釈)をすることは、当たり前のことです。

トラウマや悩みになると、多様な考えがあることを忘れてしまうので、一歩引いて考えてみてもいいことを知りましょう。

トラウマをありがたいものにする

ここまで進むと、トラウマはありがたいものだということに気がつくでしょう。

「トラウマによって守られてきた」と感じるかもしれません。

無理にありがたいものだと考える必要はありません。

順番にやっていけば、自然と思えるようになるでしょう。

トラウマに感謝する

トラウマはありがたいものだと気がついていますから、トラウマに感謝してみましょう。

トラウマによる問題が起きない思考にしていく

トラウマによる問題を抱えている方は、トラウマに振り回されてしまい、問題が起きないようにする思考や感じ方ができなくなっています。

そこで、トラウマによる問題が起きない思考にするとよいでしょう。

しかし、ご自身で行うのは難しいです。

例えば、「安全な場所にいるのに、脳の状態は危険な場所にいる状態になってしまう」「落ち着こうと思っても脳が落ち着いた状態になってくれない」といったような状態になるように、脳の誤作動も修正していく必要があります。

また、トラウマを持った脳は、良いと思って自ら脳の状態を悪くしていることも多いです。

トラウマ改善したくとも会話をしたくない、トラウマについて話せえないのであれば、脳から改善していく、ニューロフィードバックがおすすめです。

参考文献(順不同・敬称略)
津田真人 著 「ポリヴェーガル理論」を読む
斎藤環 著+訳 オープンダイアローグとは何か
道又爾・岡田隆 著 認知神経科学
井庭崇・永井雅史 著 対話のことば
藤田和生 著 比較行動学
高野陽太郎 著 認知心理学

この記事を書いた人

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