アルコール依存症にニューロフィードバックは効果があるのか?
目次
文献から調査
まずは、文献から調査しましょう。
Evidence-based Practice in Biofeedback & Neurofeedback 3rd Edition によると、エビデンスのレベルは3でした。
レベル3とは、「Probably Efficacious:恐らく効果的」とされているレベルです。
ただし、2016年に出版された本であり情報が古いと言わざるを得ません。
また、アルコール依存症だけではなく薬物依存も一緒に評価されている点にも注意が必要です。
本文を読み進めていくと、レベル4「Efficacious:効果的」にするには、二重盲検法などによる研究が必要ということが書いてあります。
2016年の段階では研究が少なく、はっきりとした結果となっていない、という状態です。
しかし、世界中のニューロフィードバックの研究者や実践家は、依存症に対して経験則的に効果があることを知っていますので、研究が進んでいるのも事実です。
ニューロフィードバックの二重盲検(ダブルバインド)は難しい
二重盲検法をニューロフィードバックで行うには、少し工夫が必要です。
脳波を見ただけで施術者(実験者)が実験状態を判別できてしまうからです。(隠したいのに隠せない)
二重盲検ができるニューロフィードバックソフトウェアもありますが、設定で分かってしまいますし、クライアント様(対象者)の反応でも分かってしまいますので、どのように研究をデザインするか、研究者の手腕が問われるでしょう。
余談ですが、クライアント様の顔の表情や姿勢などでニューロフィードバック・トレーニングがうまく進んでいるのかわかります。
ニューロフィードバックは職人芸的な側面もあり、一律にはできない難しさもあります。
アルコール依存症に効果があるとされているニューロフィードバック
経験的に、アルコール依存症に対してニューロフィードバックは効果があるとされています。
また、臨床ベースでアルコール依存症から抜け出せたという報告も多々あります。
もしアルコール依存でニューロフィードバックを受ける場合には、「アルコールを飲むことで何を得られていたのか」をチェックしトレーニング内容を組み立てていく必要があります。
アルコール依存症の場合、家族の対応方法が重要
アルコール依存症を含む何らかの依存症の場合、家族が依存症の本人を治そうとすることで、逆に依存状態が続いてしまうことが多々あります。
例えば、以下のことが考えられます。
- 生活費を出す(アルコールの購入資金になってしまう)。
- アルコールを飲んで作ってしまった借金の肩代わりをする。
- アルコールを隠すと暴力的になるから、量を決めてアルコールを差し出す。
依存の問題を解決を手助けしようとしたことが、結果的に依存の問題を継続、悪化させてしまう行動のことを「イネーブリング行動」といいます。
「イネーブリング行動」は厄介で、家族は認識していないことが大半です。
依存的な行動の確認も大事
依存症の家族がいる場合、家族が一番困っていて、本人が困っていないケースが多いです。
そこで、本人に気が付かせるため、行動を観察してみましょう。
行動というのは、ビデオカメラで撮影して誰もがわかる状態です。
- どこかに移動する
- 冷蔵庫からお酒を取り出す
- コップにお酒をそそぐ
行動を観察したら、
「アルコールを飲む前の状態は何か?」
「アルコールを飲むことで、得られているものは何か?」
「アルコールを飲んだ後、どう行動が変化するのか?」
を確認しましょう。
多くの場合、何かを得たくてアルコールを飲むか、何かから逃れたくてアルコールを飲むかのいずれかです。
ちなみに、アルコール依存症でなくても、下記のような理由で飲む方もいらっしゃいます。
- 気持ちを落ち着かせたいからお酒を飲む。
- 楽な気持ちで友達とお話したいからお酒を飲む。
効果的なトレーニングのために
本人が抜け出したいという気持ちを持つことが大切です。
また、アルコールを飲む理由がわかってくると、トレーニングの方向性が明確になり、アルコール依存から抜け出しやすくなります。
もしかしたら、ニューロフィードバック以外の方法を追加する必要があるかもしれません。
最後に、少ない回数で結果を決めつける人がいらっしゃいますが、何も得られなくなるのでご注意ください。